フランケンワインのススメ 3


所要時間: 6

フランケンワインのススメ

こん**は、昔はドイツワインをスルーしてしまっていた@wine_and_webことhirok-kです。

ドイツワイン、何故か余り人気ありませんが、中でもフランケンワインはその独特のボトルのせいもあってか、更に人気がないようです。しかし、ドイツの銘醸地モーゼルやラインガウと同じく、いやそれ以上に面白く素晴らしい生産地で、ブルゴーニュの白好きな方がハマらない理由がないワインでもあります。そんな魅力溢れるフランケンワインについて触れたいと思います。

フランケン地方とは

フランケン地方は現ドイツ連邦共和国のバイエルン州の中部から北部にかけての地域にあたり、フランクフルトの東、シュツットガルトの北に位置します。その名の通りフランケンはフランク族に由来しており、フランク王国から分裂した東フランク王国の地とも重なっています。

北緯約50度と高緯度にあることから非常に寒暖の差が激しいことから、ドイツの他の地方と同じく、この地を流れる川(マイン川)に沿った斜面を中心にブドウ畑が広がっており、その栽培面積はブルゴーニュのコート・ド・ボーヌとほぼ同じで約6,000haとなっています。

ドイツワイン生産地地図

フランケンワインの特徴

気候

フランケンは北緯約50度という高緯度に位置した大陸性気候であることから、かなり寒冷な気候となっており、夏の一時期を除き常に霜害などの寒さとの戦いがついて回る地域でもあります。

その気候条件はおよそ次のようになっています。
これを見ていただくと、いかに気温が低いかがわかっていただけるはずです。
※比較のためにフランス国内でも寒冷といわれるシャンパーニュ地方の天候条件も付記しています。

項目 フランケン地方 シャンパーニュ地方
植物生育期間 年間160〜190日 年間約200日
年間日照時間 1600〜1750時間 1650時間
年間平均気温 8.5〜9.0℃ 10℃
年間降水量 500〜600mm 674mm(エペルネ)
気候区分 大陸性気候 大陸性気候と海洋性気候

ヴュルツブルクの気温推移

土壌

フランケンを特徴付けるのは三畳紀(トリアス)に由来する土壌です。三畳紀とは中生代の時代区分で2億5100万年前から1億9960万年前とされているもので、その中で更に前期中期後期と大別されています。

図にあるように、三畳紀前期には彩色砂岩、三畳紀中期には貝殻石灰岩、三畳紀後期にはコイパー統という、それぞれに対応した地層があり、これがフランケンワインを特色づけています。そのため「フランケンの三岩石」とも呼ばれています。

彩色砂岩
色鮮やかで鉄分を含む砂岩
貝殻石灰岩
貝殻化石を含む石灰岩
コイパー統
岩塩や石膏の層からなる泥灰岩(苦灰岩)

三畳紀の区分と岩石

またフランケンは3つの地区(ベライヒ)に大別されています。

  • マインフィアエック
  • マインドライエック
  • シュタイガーヴァルト

この3地区がそれぞれ個性あるワインを生み出しているのですが、実はその3つの地区は三畳紀の土壌区分とほぼ同一となっています。

  • マインフィアエック 彩色砂岩中心の土壌
  • マインドライエック 貝殻石灰岩中心の土壌
  • シュタイガーヴァルト コイパー統中心の土壌

これにより、生産地によりその個性が全く異なることがお分かりいただけるかと思います。

フランケンの土壌分布

ブドウ品種

フランケンでは、白ブドウが約8割、黒ブドウが約2割の割合で栽培されており、一時期黒ブドウがかなり増えたのですが、近年では白ブドウ回帰が起こっています。

白ブドウでは、最も多い品種がミュラー・トゥルガウですがついで多いのがシルヴァーナーとなっており、この2品種で全体の7割を占めています。特にシルヴァーナーがフランケンでは最も高貴な品種とされています。リースリングも栽培されていますが、白ブドウ全体の5%程度と他のドイツワイン地域のように広く栽培されている品種ではありません。これはフランケン地方が寒冷な気候となっているため、晩熟なブドウ品種であるリースリングが栽培しにくいことに起因しています。
シルヴァーナーはミュラー・トゥルガウやリースリングのように品種に特徴的な香りが強くなくニュートラルな特徴を持っていることから、このフランケンの土壌構成とあいまって「土壌の持つ味わい」をより強く引き出すことが可能とされています。

フランケンの白ブドウ

黒ブドウでは、ドミナ(ポルトギーザーとシュペートブルグンダーの交配種)とシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が最も多く、特にマインフィアエックで多く栽培されています。

フランケンの黒ブドウ

生まれるワイン

ドイツの中にあってほぼ例外的ともいえるほど辛口比率が高いのがフランケンの特徴で、「石のワイン」とも呼ばれるほどミネラルに溢れ、引き締まった酒質のしっかりとした辛口仕立てのワインが多くを占めています。そのため、「男性的なワイン」とも形容されています。

フランケンの3地域では、およそ次のような個性あるワインが生まれるとされています。

マインフィアエック
彩色砂岩に由来する、鉄分を感じるワイン
マインドライエック
貝殻石灰岩に由来する、非常にクリアかつピュアなワイン
シュタイガーヴァルト
コイパー統に由来する、鉱物を思わせる香りを感じるワイン

上級ワインにはブルゴーニュと同じくラベルに村名er+畑名が記載されていることが多く、生産者の違いだけでなく村や畑単位でのテロワールの違いを探してみるとさらに興味深く感じられるでしょう。
ただ、ほとんどの場合地区名を記していない場合が多いため、上記はあくまで目安として考えてください。

フランケンの土壌分布

ボックスボイテル

フランケンワインの特徴とされる「ボックスボイテルボトル」は、ヴュルツブルクを代表する醸造所であるビュルガーシュピタールが発祥とされており、本来は18世紀に横行した粗悪ワインとの区別のために採用されたといわれています。

このボトルは基本的にスティルワインに使用されていますが、一部ではゼクト(シャンパーニュ方式で作られるドイツのスパークリングワイン)にも使用されています。

なおボックスボイテルボトルは1989年以降、EUの規定によりフランケンにのみ許されたボトルとなっていますが、バーデンの一部のワイン(タウバーフランケン)、並びにポルトガルの一部のワイン(マテウス)、さらにイタリアとギリシャの一部は例外的に使用が認められています。

ボックスボイテルボトルの例

タウバーフランケン

マイン川の支流タウバー川の流域は、ドイツワイン13地域の区分ではバーデンとされていますが、元々はフランケンに属していたものの1803年の神聖ローマ帝国代表者会議でフランケンから分離されたという経緯から、ボックスボイテルに瓶詰めされることが正式に許可されています。
またこの地の土壌は、マインドライエックとほぼ同じ貝殻石灰岩土壌となっています。

タウバーフランケンのワインの例

マテウス

ボックスボイテルというと、日本では古くから馴染のあるマテウスのボトルと思われがちですが、マテウスのボトルは第一次大戦時の火薬入れが起源とされていて、18世紀から使用されているボックスボイテルとは発祥からして異なります。

マテウスロゼの例

EUによる規定

COMMISSION REGULATION (EC) No 607/2009のANNEX XVII / RESERVATION OF CERTAIN SPECIFIC TYPES OF BOTTLEにその規定があり、この規定において産地やワインの指定だけでなく、構造規定もなされています。

より厳密な規定を知りたい方はぜひご一読ください。

著名な畑と生産者

著名な畑

フランケン最高の畑とされているのが、
Würzburger Stein ヴュルツブルガー・シュタイン(ヴュルツブルク村のシュタイン畑)
です。その名の通り、石とすら感じられるほどに強いミネラルを持つワインが生まれる銘嬢畑です。
この中に更に小区画としてHarfe ハルフェ(ハープの意味)というのがあり、ヴュルツブルガー・シュタインの中でも更に最高の畑とされています。この畑はビュルガーシュピタールの単独所有となっています。

この他にも優れた畑が多くありますので、各地区ごとにいくつかご紹介します。

マインフィアエック
Bürgstadter Centgrafenberg ビュルクシュタッター・セントグラーフェンベルク
Klingenberger Schlossberg クリンゲンベルガー・シュロスベルク
マインドライエック
Würzburger Innere Leiste ヴュルツブルガー・インネレライステ
Randersackerer Sonnenstuhl ランダーサッカラー・ゾンネンシュトゥール
Escherndorfer Lump エッシェンドルファー・ルンプ
シュタイガーヴァルト
Casteller Schlossberg カステラー・シュロスベルク
Iphöfer Julius-Echter-Berg イプヘーファー・ユリウスエヒターベルク

ヴュルツブルガー・シュタイン(ビュルガーシュピタール)

著名な生産者

フランケンにおける生産者数は7000弱といわれていますが、そのうち1ha未満の生産者が全体の8割余りを占めており、5ha以上の生産者は僅か3%少々という非常に偏った構成となっています。

そのため協同組合の果たす役割が大きくなっており、次の5協同組合が主要なものとして、また品質の高さでも有名です。

その中にあってフランケンを代表する大規模な生産者として次の3生産者が有名です。

また各地区にそれぞれ銘嬢とされる生産者があり、そちらもあわせてご紹介します。

マインフィアエック
Weingut Rudolf Furst ルドルフ・フュルスト
Weingut Furst Löwenstein フュルスト・レーヴェンシュタイン
マインドライエック
Weingut Juliusspital ユリウスシュピタール
Weingut Schmitt’s Kinder シュミッツ・キンダー
Weingut J.Störrlein & Krenig シュテアライン&クレニヒ
シュタイガーヴァルト
Fürstlich Castell’sches Domänenamt 旧カステル大公国管理局
Weingut Johann Ruck ヨハン・ルック

Trias

フランケンを特徴付ける三畳紀の名前に由来するトリアス(Trias)というグループがあり、このグループのメンバーは三畳紀の地質や特有の気候、つまりテロワールを重視したワイン造りを行っています。
メンバーは銘嬢と名高い5生産者で、そのワインにはこのような帯封がつけられています。

トリアスのロゴ入り帯封

近年の傾向

孤高とも言えるフランケンですが、時代の流れにしたがって新たな方向も生まれています。

従来の典型的なスタイルのフランケンワインだけでなく、
ブルゴーニュタイプのボトルやボルドータイプのボトルを使用したフレッシュさを重視したワイン
ブルゴーニュのテロワール主義・格付け制度にならった、フランケン特有のテロワールを重視したワイン
などが生まれています。

伝統に則した古典的なワインだけでなく、新しい世代による新しいスタイルのワインもそれぞれフランケンの魅力を伝えてくれることでしょう。

ブルゴーニュタイプのボトルを採用したフランケンワインの例

まとめ

とかくボトルの特殊性や他地域のドイツワインの印象を強く持ってしまいがちなワインですが、フランケンのワインは様々な個性を持ち、その特有のテロワールを色濃く反映した土地の味わいを楽しめるワインです。

ワインショップ以外ではなかなか目にする機会のないフランケンワインですが、もしこれをお読みの方がブルゴーニュの白ワイン好きな方でしたら、ぜひ一度は試していただきたいワインです。

そんなボトルを開けてみませんか?きっと新しい発見につながること請け合いです。

更新履歴
2014/03/26 @katabamiinfoさんから指摘いただいたボックスボイテルボトルの使用規定を追加


コメントを書いてみませんか?

3 thoughts on “フランケンワインのススメ

  • katabami (@katabamiinfo)

    いつも興味深い記事で勉強させてもらっています。

    Bocksbeutel ですが、イタリアやギリシャの一部のワイン産地でも認められています。

    Commission Regulation (EC) No. 607/2009
    ANNEX XVII
    RESERVATION OF CERTAIN SPECIFIC TYPES OF BOTTLE

    • hirok_k
      hirok_k Post author

      katabamiさん
      コメントありがとうございます!
      イタリアとギリシャの一部でも認められてるんですね、知りませんでした・・・
      詳しく調べてまたアップデートしたいと思います。

      今後共、当ブログをよろしくお願いいたします。